「もしも病気や怪我で、明日から長期間会社に行けなくなったら…」
そんなことを考えたことはありますか?身体の不調に対する不安はもちろんですが、
現実問題として「給料が入ってこなくなる」という恐怖は私たちの生活基盤を大きく揺るがします。
家賃や住宅ローン、光熱費、食費…。生きていくためのお金は、休んでいる間も待ってはくれません。
しかし、会社員として働いている方には生活を守るための強力なセーフティネットが用意されています。
それが「傷病手当金(しょうびょうてあてきん)」です。
この記事では働けない期間の収入を支えるこの制度について、
仕組みだけでなく、実際のメリットや「万能ではない」という注意点まで正直に解説します。
傷病手当金とは?
傷病手当金とは、健康保険(社会保険)に加入している人が、病気や怪我のために会社を休み、
十分な給料が受けられない場合に支給されるお金のことです。
いわば「働けない期間の所得補償」です。
会社員や公務員などが対象で自営業者などが加入する「国民健康保険」には原則としてこの制度はありません。
まさに、会社員ならではの特権と言える制度です。
いくら、いつまでもらえるのか
支給額:直近1年間の給料(標準報酬月額)の約3分の2(約67%)が支給されます。
例:月給30万円の方なら、月額約20万円程度が目安です。
支給期間:支給開始日から通算して最長1年6ヶ月まで受け取れます。
※2022年の法改正により、途中で少し復職した期間はカウントされず、休んだ期間だけを合計して1年6ヶ月分もらえるようになりました。
支給されるための4つの条件
傷病手当金を受け取るには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 業務外の事由による病気や怪我であること
仕事中や通勤中の怪我は「労災保険」の対象になるため、傷病手当金は使えません。
プライベートでの病気や怪我が対象です。
- 仕事に就くことができないこと
単に「調子が悪い」だけではなく、医師による「就労不能=働けない状態」という証明が必要です。
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
休み始めた最初の3日間は「待機期間」と呼ばれ、手当金は出ません。
4日目の休みから支給対象になります。
- 休業期間中に給与の支払いがないこと
会社から給料が出ている場合、傷病手当金は出ません。
ただし、給料が手当金より少ない場合はその差額が支給されます。
【待機期間の考え方】
「連続3日」が必要です。
〇 1日休み→2日休み→3日休み(待機完成)→4日目から支給
× 1日休み→2日出勤→3日休み→4日休み…(連続していないので待機未完成)
※待機期間の3日間は、有給休暇を使っても、土日祝日が含まれていてもカウントされます。
制度のメリット
この制度があるおかげで多くの人が安心して療養に専念できています。
生活費の基盤が守られる
給料の約3分の2とはいえ、毎月まとまったお金が入ることで、
家賃などの固定費を支払う目処が立ちます。
長期の治療に対応できる
最長1年6ヶ月という期間は、がん治療やメンタルヘルスの不調など、
長期療養が必要な病気にとって大きな支えとなります。
退職後も受給できる場合がある
一定の条件(1年以上の被保険者期間など)を満たしていれば、
会社を辞めた後も継続して手当金を受け取ることができます。
治療に専念するために退職を選ばざるを得ない時の命綱になります。
注意点・デメリット
非常にありがたい制度ですが、「これさえあれば完璧」というわけではありません。
現実的に困りやすいポイント(デメリット)も知っておきましょう。
1.給料の3分の2しか出ない
満額ではありません。手取り額で比較すると、普段の生活水準の8割程度になることが多いです。
残業代などは考慮されないため、普段残業が多い方はギャップを大きく感じるかもしれません。
生活費の見直しが必要になります。
収入は減るのに支出は変わらない状況では生活水準を下げざるを得ません。
2.申請から入金まで時間がかかる
これが一番の落とし穴です。
給料のように毎月決まった日に自動で振り込まれるわけではありません。
「1ヶ月休む」→「医師と会社に証明書を書いてもらう」→「健康保険組合に申請する」→「審査」→「振込」という流れになるため、
申請してから入金されるまで1〜3ヶ月かかることが珍しくありません。
この間の生活費を賄える貯金(生活防衛資金)がないと、資金ショートする恐れがあります。
3.社会保険料は引かれ続ける
会社を休んでいて給料がゼロでも、
社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の支払いは免除されません。
普段は給料から天引きされていますが、休職中は給料がないため、会社から「今月分の保険料を振り込んでください」と請求が来ます。
傷病手当金が入る前にこの請求が来ることもあるため二重の負担感があります。
4. 勤め先によって対応が異なる
大企業などの健康保険組合によっては、法定の金額に上乗せして支給する「付加給付」がある場合があります。
例えば、どんなに医療費がかかったとしても、2万円までしか払わなくてよいよ!という企業にお勤めの方と会ったことがあります。
一方で、中小企業の多くが加入する「協会けんぽ」には上乗せはありません。
また、休職中の手続きを人事部が丁寧にサポートしてくれる会社もあれば、
自分ですべて調べないといけない会社もあり、環境によって負担感が違います。
5. 「待機期間」の扱いに注意
最初の3日間は手当金が出ません。そのため、この3日間については有給休暇を使って給料をもらうのが一般的です。
ただし、4日目以降を有給休暇にしてしまうと、その日は「給料が出ている」とみなされ、
傷病手当金は出なくなります(※給与額による)。
有給を温存するか、先に使い切るかは戦略的な判断が必要です。
「万能ではない」ことを知っておく
傷病手当金は素晴らしい制度ですが、あくまで「最低限の生活を守るための補償」です。
- 入金までのタイムラグを埋めるための「生活防衛資金(貯金)」
- 足りない3分の1や、治療費そのものを補うための「民間の医療保険」
- 固定費を下げておく「家計のダウンサイジング」
これらを組み合わせて初めて盤石な備えとなります。
「制度があるから貯金ゼロでも大丈夫」とは考えないでください。
まとめ
傷病手当金は会社員が働けなくなった時の最も頼りになる味方です。
給料の約3分の2が、最長1年6ヶ月もらえる。
ただし、入金まで時間がかかることや、そのうち社会保険料の支払いは続くことに注意。
「国民健康保険」の人にはない、会社員の特権。
病気で身体が辛い時に、お金の心配まで重なると回復も遅れてしまいます。
「自分にはこういう権利があるんだ」と知っておくだけで、いざという時の心の余裕はまったく違います。
制度の限界も理解した上で、賢く利用して生活を守りましょう。
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