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■ 言葉にするのが、こんなに怖いとは思わなかった
病院で「腫瘍ですね」と言われた帰り道、
私は、ひたすら“どうやって家族に言おうか”を考えていました。
実家までは車で20分。
でも、その日は1時間以上かけて帰りました。
頭の中では何度もリハーサルをしました。
「落ち着いて話せば大丈夫」
「まだ確定じゃないし」
そう自分に言い聞かせながら。
でも、家のドアを開けた瞬間、
“いつも通り”のリビングの光景が目に飛び込んできました。
テレビの音、母の笑い声、父の新聞をめくる音。
その「日常」が、逆に重くのしかかりました。
■ 「ちょっと話したいことがあるんだけど」
しばらく何も言えず、夕飯を食べ終えてから意を決しました。
「ちょっと話したいことがあるんだけど…」
その瞬間、家族全員の視線が一斉に自分に向く。
喉が渇いて、声がうまく出ませんでした。
「実は…がんかもしれないって言われた」
たったそれだけの言葉なのに、
時間が止まったような空気が流れました。
母の箸が止まり、
兄弟は目を丸くしてこちらを見つめ、
父は少しの沈黙のあと、静かにこう言いました。
「なんで症状があったのにもっと早く言わなかったんだ。」
怒鳴るというより、絞り出すような声。
その一言に、胸が詰まりました。
母は涙をこらえながら、
「大丈夫なの?どんな病気なの?」と必死に聞いてきました。
私はうまく説明できず、
ただ「手術するかも」としか言えませんでした。
■ 「平和な日常に爆弾を落とすような感覚」
あの瞬間を、今でもはっきり覚えています。
家族に病気を伝えるというのは、
まるで平和な日常に“爆弾を落とす”ようなことでした。
自分の言葉一つで、家族の空気が一変する。
そして、私だけでなく、
家族みんなの人生にも“がん”という現実が入り込む。
その責任の重さに、ただ呆然としました。
でも同時に気づいたのです。
「自分一人の病気じゃない」ということに。
■ 家族の「強さ」に救われた
翌日、母が病院に付き添ってくれました。
父も仕事の合間に医師の説明を聞きに来てくれました。
兄弟も「大丈夫だからな」とLINEをくれました。
あのとき、私は本当に弱っていました。
でも、家族の行動が、心の支えになっていました。
「怒ってごめん」と後から父に言われたとき、
初めて涙が出ました。
本当はみんな、心配で仕方なかったんですよね。
それでも強くあろうとしてくれていた。
あの瞬間、家族って本当にすごいなと思いました。
■ 今、同じような状況にいる人へ
もし今、あなたが
「家族に病気をどう伝えればいいか」悩んでいるなら、
無理にうまく話そうとしなくていいです。
泣いてもいいし、黙ってもいい。
どんな形でも、“伝えること”が一番大切です。
家族は、あなたを責めるためではなく、
守るためにいるのだから。
■ まとめ:伝えることで強くなれる
・病気を伝えるのは、勇気がいること
・でも、その一歩が「支え合う」きっかけになる
・家族の強さは、想像以上に温かい
どんなに心細くても、
“あなたの味方は、もうそばにいる”。
そう伝えたいです。
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