退院と放射線治療──日常に戻るという“リハビリ”

精巣腫瘍1st

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退院しても、すぐに“元通りの生活”に戻れるわけではない。
精巣腫瘍の摘出手術を終えた私は、放射線治療を受けながら「心と体を立て直す時間」と向き合った。
再発への不安、仕事への焦り、そして“日常を取り戻すリハビリ”の記録。

■ 退院しても、すぐには「元の生活」に戻れなかった

手術から1週間後、無事に退院の日を迎えました。
久しぶりに浴びた外の空気は、
入院中に想像していたよりもずっとまぶしくて、
同時に「もう後戻りできない」という現実も突きつけてきました。

帰りの車の中では母が運転し、
助手席で私は静かに窓の外を眺めていました。
心の中は“安心”と“不安”が入り混じった不思議な感覚。

「もう病院に戻りたくないな」
そう思いながらも、次の通院予定がすでに決まっていました。


■ 再発を防ぐための「放射線治療」という選択

退院して間もなく、おなかのあたりに転移がありました。
それをやっつけるための「放射線治療」を勧められました。

病理の結果はセミノーマ(精上皮腫)
比較的おとなしいタイプの精巣腫瘍ではあるので、
切除で終わる予定でした。

しかしそのがんは私のリンパ節へ転移していました。

「もう十分頑張ったのに、また治療か…」
そう思う一方で、
「生きるんだ」という気持ちも強く、
5月から治療を受けることを決めました。


■ 放射線室の空気──“静かな恐怖”があった

初めて入る放射線治療室。
厚い扉が閉まる音が、やけに重く響きました。
部屋の中央にある金属製のベッドに横たわると、
天井に設置された大きな機械が静かに動き出します。

「では、始めますね」
という声と同時に部屋の中は静寂に包まれました。

放射線は痛くも痒くもありません。治療自体はセットから1回10分程度。
それを週5回、1か月続けるスケジュールでした。


■ 通院の毎日は“体より心”との戦いだった

通院を始めると、
普段の生活に少しづつ復帰し始めました。

しかし体はまだ本調子ではなく、
午前中に治療をした後、お昼になると強い吐き気に襲われました。

それでも「元気に見られたい」「普通でいたい」と思い、
夜は単発のアルバイトをはじめました。

周りは会社に入って稼いでいる。
私もその「普通」に参加したかったのです。


■ 放射線治療が教えてくれた「焦らない」ということ

1か月の放射線治療が終わる頃、
少しずつ体の疲れが抜けていくのを感じました。
髪の毛や肌の変化もほとんどなく、
副作用は比較的軽かったのが救いでした。

ただ、心の中では「もう病気を繰り返したくない」という想いが
日に日に強くなっていきました。

その時主治医が言ってくれた言葉が今でも忘れられません。

「病気は“焦らせる”けど、回復は“ゆっくり”でいいんですよ。」

それを聞いて少し肩の力が抜けました。
健康って、すぐ取り戻すものじゃない。
“取り戻していく過程”そのものが、リハビリなんだと気づきました。


■ 退院後に得た3つの教訓

  1. 体より先に、心の回復を意識すること
  2. 「普通に戻る」よりも、「新しい自分をつくる」気持ちを大切に
  3. 焦らず、比べず、自分のペースで進むこと

退院はゴールではなく、
“第二のスタートライン”でした。

放射線治療はつらいものではなく、
「焦らず進むための時間」だったのかもしれません。


■ まとめ:日常を取り戻す“リハビリ”はゆっくりでいい

退院して、放射線治療を受け、
少しずつ日常を取り戻していく中で感じたのは──
「生きるスピードは、人それぞれでいい」ということ。

がんの治療も、心の回復も、競争じゃない。
大切なのは“今日をちゃんと生きること”。

焦らず、諦めず、前を向く。
それが私の“再出発”でした。

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