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手術を前に「未来の命を残す」ため精子凍結に挑んだ日。女性総合診療部で感じた命の重さ、体外受精の現実、突きつけられた“量が少ない”という事実。それでも希望を手放さなかった理由──精巣腫瘍と向き合い、未来へ命のバトンをつなぐための選択を綴ります。
■「子どものことを考えよう」から一転
「これから子どものことを考えていこうね」
そんな会話をしていた矢先、
私は“精巣を失う”という現実と向き合うことになりました。
医師からの説明を受け、
私に残された時間はわずか。
「早く動かなくちゃ」
手術までの期間に、
“未来の命を残す”ための行動を起こすことを決めました。
■女性総合診療部へ──初めての場所、異なる空気
向かったのは聖路加国際病院の「女性総合診療部」。
名前の通り待合室には女性ばかり。
妊婦さん、不妊治療中の女性、
不安そうな表情の人、涙を拭う人…。
そんな光景を見て、胸が詰まりました。
「どれだけ医療が進歩しても、
最後に生命を産むのは女性なんだ。」
不妊の原因は男女どちらにもあり得る。
でも「痛み」や「負担」を背負うのは、
やはり女性であることを痛感しました。
その空間で、私は“父になる”という覚悟の重さを改めて感じたのです。
■精子凍結と体外受精──現実を知る時間
診察室に入るとベテランの女医さんが静かに説明を始めました。
「体外受精の成功率は40〜50%あります」
「精子は10年以上前のものでも使用できます」
医学の進歩に思わず胸をなでおろしました。
10数年前に凍結していた3本分の精子。
「正直それで十分かもしれません」と医師は言いました。
しかし私は少し違和感を覚えました。
“もう十分”という言葉に、
「最後のチャンスかもしれない」自分の想いは伝わらない。
医師にとっては日常でも、
私にとっては「人生の分岐点」なのです。
■それでももう一度チャンスを残したい
2度と精子をつくれなくなる。
再発という現実に向き合いながらも、
「これが最後のチャンスかもしれない」と思いました。
“生命をつなぐ可能性を少しでも多く残したい”
その想いを医師に伝え再度の凍結をお願いしました。
■命を預ける“静かな戦い”
通されたのは精子採取専用の個室。
ソファとティッシュ、
そして“歴戦のDVDコレクション”が並ぶ空間。
言葉にすると少し笑えてしまうけれど、
不安でいっぱいでした。
DVDには目もくれず、スマホ片手に自分と向き合いながら、
頭の中にはこんな言葉が浮かびました。
「これが子どもを残すための最後の仕事かもしれない」
数分の行為が、
未来をつなぐための大きな一歩になる。
そんなプレッシャーの中、
“未来への種”を託しました。
■そして突きつけられた現実
約1時間後診察室に呼ばれ、
医師が淡々と告げました。
「精子の量が少ないですね」
“活動率”ではなく“量”。
予想外の結果に、
私は思わず沈黙しました。
これが現実。
けれど希望はまだ終わっていません。
■医学の力 × 自分の意志
医師はこう続けました。
「体外受精なら40%くらいの確率でお子さんを迎えられます。
昔よりもずっと可能性は高いですよ。」
その言葉に救われました。
医療の進歩に感謝しながらも、
やはり「自分の身体を整える」ことの大切さを実感しました。
だから私はこう決めました。
- 睡眠をしっかりとる
- 軽い運動をする
- 食生活を整える
- お酒は控える
“たかが数日、されど数日”
未来をつなぐための努力に全力で向き合おうと思いました。
■まだ見ぬ我が子へ
「まだ見ぬ我が子に少しでも希望を残したい。」
その想いだけが、
私を支え、前へと動かしてくれました。
病気は未来を奪うものではない。
未来を“見つめ直す”きっかけをくれる。
今日もまた、
少しずつ未来へ向けて積み重ねています。
■ この記事のポイント
- 医療の進歩は「生命をつなぐ希望」になる
- 患者にとって“1回の診察”が人生の分岐点
- 最後のチャンスだとしても諦めなければ道はある
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